雑記

出生前診断のメリットと条件 命の選別とは?

出生前診断

第10話のテーマは出生前診断。TBSの金曜ドラマ「コウノドリ」を見ました。綾野剛さんが主演の産科医・鴻鳥サクラを演じています。2組の夫婦が「出生前診断」を受け、出産するかどうか悩む。スタッフと患者がどのように向き合い寄り添うのかということがポイントでした。

出生前診断というのは、知っているけれど自分には何か関係ないような気がしていました。しかし、私が30代になって子どもを産める可能性があるリミットについて考えるようになった今、他人ごとではないように感じています。
そこで、出生前診断のメリットとデメリットを調べ考えてみました。

出生前診断
私は出生前診断をうけない きれいごとでもかまわない 昨年私は、コウノドリというドラマを見て「出生前診断」について書きました。この記事は、「出生前診断のメリットと条件 命の選別とは?...

出生前診断とは?

出生前診断(しゅっしょうまえしんだん)とは、妊娠中に胎児の染色体に異常がないかどうかを検査することです。血液検査、羊水穿刺や超音波検査などによって胎児の病気や奇形の有無を診断します。2013年4月に日本医学会が認定した医療機関の臨床研究としてスタートしました。

  • 新型出生前診断
  • 羊水検査
  • 超音波検査
  • 母体血清マーカー検査

出生前診断の目的は、産まれる前に胎児の状態を観察・検査し、治療を行ったり、生まれた後の赤ちゃんの治療の準備をしたりすることにあります。

新型出生前診断(母体血胎児染色体検査 NIPT)

新型出生前診断は、血液検査で行います。妊婦の血液中の遺伝子情報を分析し、染色体異常や遺伝性の病気を調べる新しい検査です。妊娠すると血液の中に、母体だけではなく胎児由来のDNAの断片が混ざるようになります。そのDNAの断片の割合を調べます。
羊水検査や母体血清マーカーテストといった出生前診断に比べて、リスクが低く精度が高い検査とされています。しかし、日本国内で受けられる病院は限られています。
13番、18番、21番染色体の濃度を調べることで「パトー症候群」「エドワーズ症候群」「ダウン症」の3つの染色体異常の可能性が高い確率でわかります。
検査対象は35歳以上で、妊娠10週から検査ができます。検査結果は約2週間。この検査で陽性となった場合に、羊水検査で本当に染色体異常があるかを確認をするかを決めます。

羊水検査

羊水検査とは、妊婦のお腹に針を刺して羊水を調べる検査です。染色体異常、遺伝子の病気があるかどうかを診断します。とても精度が高いため、確定診断として利用されています。しかし、羊水を採取するため、流産のリスクや感染症になるリスクを伴います。羊水検査を受けられる時期は、妊娠15週以降です。

超音波検査(エコー検査)

超音波検査は、胎児の体に異常がないかを調べるために行います。新型出生前診断を受けるには条件がありますが、超音波検査は誰でも受診することができます。
超音波検査では、首の後ろにある「NT」と呼ばれるむくみを見つけることができる。この部分の厚みが増すほど、病気の疑いが高まる。しかし、超音波で異常を調べる技術には個人差があります。

母体血清マーカー検査

妊婦の血液から胎児のホルモンの濃度を調べ、染色体異常がないかを検査します。新型出生前診断よりも精度は低い。この検査で陽性になった場合は、羊水検査を行う場合が多い。

新型出生前診断を受けられる条件は?

母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針によると下記のとおりです。

V-2対象となる妊婦。
母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査を受けることを希望する妊婦のうち、次の1~5のいずれかに該当する者とする。

  1. 胎児超音波検査で、胎児が染色体数的異常を有する可能性が示唆された者。
  2. 母体血清マーカー検査で、胎児が染色体数的異常を有する可能性が示唆された者。
  3. 染色体数的異常を有する児を妊娠した既往のある者。
  4. 高齢妊娠の者。
  5. 両親のいずれかが均衡型ロバートソン転座を有していて、胎児が13トリソミーまたは21トリソミーとなる可能性が示唆される者。

誰でも受信をすることができるわけではありません。上記の条件を満たしており、事前に遺伝カウンセリングを受けて、検査について理解した人が新型出生前診断を受けることができます。

新型出生前診断の問題

高齢出産だから調べておきたいと考える人が多く、近年高齢出産の増加と合わせて出生前診断が増えています。しかし、遺伝カウンセリングを行わずに検査だけを行う機関も存在しており、十分な知識や理解を持たずに検査を受けた結果「出産するか」どうかという心理的な負担をおうケースがあります。日本産科婦人科学会からは次のような指摘をしている。

III母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査の問題点
(1) 妊婦が十分な認識を持たずに検査が行われる可能性があること。
母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査は、妊婦からの採血により行われるものである。きわめて簡便に実施できることから、検査に関する十分な説明が医療者から示されず、その結果、妊婦がその検査の意義、検査結果の解釈について十分な認識を持たないまま検査が行われるおそれがある。そのため、検査結果によって妊婦が動揺・混乱し、検査結果について冷静に判断できなくなる可能性がある。
(2) 検査結果の意義について妊婦が誤解する可能性のあること。
母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査は、母体血中のDNA断片の量の比から、胎児
2が13番、18番、21番染色体の数的異常をもつ可能性の高いことを示す非確定的検査である。診断を確定させるためには、さらに羊水検査等による染色体分析を行うことが必要となる。この点は、従来の母体血清マーカー検査と本質的に変わるところはない。母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査においては、その感度が母体血清マーカー検査と比較して高いために、被検者である妊婦が得られた結果を確定的なものと誤解し、その誤解に基づいた判断を下す可能性がある。
(3) 胎児の疾患の発見を目的としたマススクリーニング検査として行われる可能性のあること。
母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査は、妊婦から少量の血液を採取して行われる簡便さのため、医療者は容易に検査の実施を考慮しうる。また検査の簡便さゆえ妊婦も検査を受けることを希望しやすい状況となりうる。その結果、不特定多数の妊婦を対象に胎児の疾患の発見を目的としたマススクリーニング検査として行われる可能性がある。

命の選別をしているのではないかという議論もあります。どれが正しいのかは誰にもわからないということです。

新型出生前診断のメリットとデメリット

新型出生前診断のメリット

新型出生前診断のメリットは、血液検査なので母体への負担や比較的リスクが少ないこと、検査の精度が高いこと。新型出生前診断の結果が「陰性」ならば、99%の確率で染色体異常ではないと考えられます。

新型出生前診断のデメリット

新型出生前診断のデメリットは、検査が保険適用外であること、羊水検査を行うことになった場合に結果が出るまでに時間がかかるため、「出産」するかどうか話し合う時間が限られていること。そして、検査結果が陽性だった場合に心理的負担が大きいこと。
また、新型出生前診断でわかる染色体の異常は一部であり、この検査ではわからない病気を持っている可能性があります。

出生前診断で「陽性」と判定されたうち97%が出産をあきらめている

2014年6月に発表された病院グループ集計によると、前年4月の開始からの1年間に新出生前診断を受けた人の中で、「陽性」と判定された妊婦の97%が出産をあきらめているとのこと。その中には、羊水検査を受ける前に中絶を選択した人もいます。逆に出産を選択した人は3%います。

15年前に出生前診断を受けた私がいま、思うこと

出生前診断は命の選別か

陽性とされながら、確定診断で異常がなかった「偽陽性」の場合もあります。ドラマ「コウノドリ」では、ダウン症の可能性が高いと診断された2組の夫婦についてのストーリーでした。
羊水穿刺の結果、陽性が確定したときに、「出産」するかどうかというそれぞれの選択をしました。悩みぬいて選んだ答え、どちらを選んでも根本的にある気持ちは変わらないのではないかと思いました。どちらを選択しても後悔しないわけがありません。
中絶を選択してもそれでも我が子を最後に抱きたいと思うこと、そこにすべてが集約されているように思いました。
私は30代になり、パートナーもいないので生みたいとどんなに願っても子どもを授かることは今のところありません。だからこそ、私は思います。もし、パートナーがいて子どもを授かった時に「産みたい」「会いたい」という気持ち。この子にはもう二度と会えなくなるという気持ち。
だからこそ、真剣に向き合って考える必要があるのだと思います。

私は出生前診断をうけない きれいごとでもかまわない

参考記事

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こんちゃ
◆Webライター◆ イベント取材・導入事例・オウンドメディア記事の編集ライティングをIT企業中心に活動しています。